組織がダメなのを誰かのせいにしたい気持ち
分からなくはない。
私も昔、そう思っていた。
若いとそう思いがち。と言っておくけど。
視野が狭いからなんだと思う。
ブラックボックスの何か、経営者とかを原因にしておくと片付いた気になる。
で、以下の記事。
みずほ銀行を題材に「なぜ倫理的な組織を築けないのか」を考える|山崎元のマルチスコープ|ダイヤモンド・オンライン
この本は、行動倫理学という分野の研究成果を紹介した本で、かけ値無しに面白い。個人や組織が、どうして倫理的に行動することができない場合があるのかについて、学問的に研究している。
- 作者: マックス・H・ベイザーマン,アン・E・テンブランセル,谷本寛治,池村千秋
- 出版社/メーカー: エヌティティ出版
- 発売日: 2013/09/10
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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倫理的でありたいと強く願い標榜する組織(みずほ銀行も、そうだったろう)であっても、現実に倫理的に行動することは、極めて難しいのだ。
倫理だけじゃないだろう。
生産性についても同じだろうと思う。
基本的には、誰しも倫理的で生産的でありたいと思うだろう。
しかし、そうならない。
そうならない理由がある。原因がある。メカニズムがある。
経済的インセンティブにしか言及していないが、それだけではない。他のインセンティブもある。
様々な要素が互いに影響を及ぼし合って、予期せぬ現象が発生している。
複雑系だ。
経営者のせいにしてみても、何の意味もない。
組織構造、インセンティブ構造をハックする必要があるのだろう。
しかし、組織が巨大であればあるほどハックの難易度は上がる。
スパゲッティコードなんてもんじゃない。
リスク回避に限らず無駄な社内プロセスが多い。やっかいなのは、それが、社内力学的には合理的である点。非効率だからとすっとばすと大きな組織は動かない。デカいブツを動かすテコの準備は面倒だが必要なんす。
大企業病は、組織が大きくなれば、必然的に発生する。
大きく複雑な組織では誰も意図しなくても様々な要素が相互に影響しあい、様々な現象が発生する。
誰もグライダーを飛ばそうなんて考えていない。
繰り返すが、それは誰も意図していない現象だ。
複雑系の中で発生した現象を外部から見ると、法則がありそうに見える。
しかし、その現象を生んでいるのは本当に複雑な相互作用であって、意図してないのである。
簡単に解決できそうだが、実際にはできないのだ。
現象自体に手当をすることはもちろんできる。
しかし、それは解決ではない。
と書いて、結局問題を解決できないと言っているだけだけど、ブラックボックスを誰かのせいにして、分かった気になって、簡単に解決できそう、と思うのは幼いし、実際にはそうではない、というようなことがあることを留意しておいたら良い、と思いました。